人手不足の解決に向けた行政機関の取り組み

介護業界は、慢性的な人手不足に悩まされています。介護職員は、肉体的負担の大きい身体介護に携わるうちに健康を害したり、夜勤で生活のリズムを崩したりすることが少なくありません。さらに、仕事が大変なわりに給料が安い職場もあり、そういう職場では離職者が絶えないのです。離職率が高い職場では、介護職員の負担が更に大きくなり、益々離職者が増えるという悪循環に陥っています。こうした課題を解決するため、行政機関は様々な取り組みを行っています。

まず、全ての介護職員の収入を底上げするため、処遇改善加算が実施されました。処遇改善加算は、申請した介護事業所に交付されるもので、事業主以外の従業員に配分されます。配分の方法は事業主に任されており、従業員全員に均等配分しても、勤務実績に応じて配分額を変えても良いです。ただし、処遇改善加算は年に1回程度の一時金であって、毎月の給与を底上げするまでには至っていません。そこで、特定処遇改善加算も付与されることになりました。特定処遇改善加算は、一定期間の実務経験を経た介護福祉士に対して、年収の増額を行うものです。

介護福祉士は、介護職員の中でも国家資格を持ち介護に関する専門的な知識とスキルを身につけているスペシャリストです。介護福祉士を離職させないことが、介護ケアの質の低下を防ぐことにつながると考えて良いでしょう。特定処遇改善加算を受けられると、介護福祉士の年収は全産業の平均年収まで引き上がり、月収が8万円以上アップする介護福祉士もいると言われています。こうした収入の改善とともに、業務ごとに担当を割り振る介護シェアリングなど、介護職員の負担を減らす取り組みを普及させることも必要となるでしょう。